
よもつへぐい(黄泉戸喫)とは、
黄泉の国の食事のことです。
これを口にした死者は黄泉の国の人となり、
二度と現世に戻ることはできないとされています。



この記事では、よもつへぐいとは
具体的にどのような食べ物だったかを解説していきます。
【よもつへぐい】イザナミが黄泉の国で食べた物は何か?
『古事記』『日本書紀』には
イザナミが黄泉の国で何を食べたかは
書かれていません。
なので、考古学的なアプローチで
よもつへぐいについて考えてみましょう。
黄泉の国=横穴式石室!?
そもそもイザナキが黄泉の国を訪問して
死んだ妻・イザナミに会う物語は、
横穴式石室(古代のお墓)内における
行為や光景を説話化したものであると
古くから言われています。
遺骸を納める玄室(墓室)を黄泉の国に、
羨道(外部と結ぶ通路)をヨモツヒラサカに、
閉塞石を千引きの石に置き換えて
物語が構成されているといいます。
黄泉の国 = 横穴式石室
と仮定すると、
古墳の内部を調査することで、
よもつへぐいの内容もわかるかも知れません。
古墳から出土したハマグリ
愛媛県松山市の葉佐池古墳からは、
よもつへぐいの痕跡と見られるものが出土しています。
それはハマグリです。


一号石室の奥壁添いに並べられた
須恵器のうち一点の中にハマグリの殻が
納まっていることが確認されているのです。
二枚の殻のうち一枚のみで、殻の内面を
上に向けた状態で納まっていました。
火を受けた痕跡は見られません。
焼いたり煮たりの調理をしていなかったか
もしくは身だけ外して調理して
殻に乗せていたと考えられます。
壺の蓋は完全におおわれておらず、
少し隙間が開いた状態で斜めに乗せてありました。
死者の食べ物として内容物を食べられるように
との配慮かも知れません。
二号石室からは、カワシンジュガイや
カラスガイの殻片が出土しています。
これらの貝類は、死者への供え物であり
よもつへぐいの食材であったと考えられます。
よもつへぐいの食べ物は
ハマグリなどの貝類であった。
葉佐池古墳から海岸線までは
直線距離で14㎞離れています。
死者のために海から運ばれたのでしょう。



葉佐池古墳は
古墳時代後期(6世紀~7世紀半ば)に
閉じられたものと考えられています。
『古事記』は7世紀半ばから後半に
記録されたと言われているから、
この古墳が築かれた時代はまさに
古事記に語られている神話が実際に
人々の間で語られていた時代であると言えます。



ギリシャ神話のよもつへぐいはザクロ
よもつへぐいのお話は日本だけではありません。
ギリシャ神話にもよもつへぐいのお話が見られます。
「ペルセポネの冥界下り」のお話です。
あらすじを紹介しましょう。
ゼウスとデーメーテールの娘・ペルセポネは、
ある日、花を摘んでいたところを
冥界の神ハーデスに連れさられてしまいます。
母デーメーテールは娘が冥界に
連れ去られたことを知り父ゼウスに抗議に行きます。
ところが、ゼウスは
「ゼウスであれば夫として不釣り合いではない」
と娘の略奪を認めるような発言をします。
デーメーテールは怒って、
地上に実りをもたらすのをやめてしまいました。
その後、ゼウスはハーデスに娘ペルセポネを
解放するように求めます。
ハーデスはそれを許可しますが、
その際にハーデスはペルセポネに
ザクロを実をさしだします。
空腹だったペルセポネは
そのザクロを食べてしまいました。
冥界の食べ物を食べてしまったものは、
冥界に属さなければならないという
決まりがあったため
ペルセポネはハーデスの妻となり
1年のうち1/3は冥界で過ごすことになりました。


Wikiメディアコモンズより引用
ギリシャ神話ではザクロを食べることが
よもつへぐいとされています。
よもつへぐいと桃の関連性
イザナキが黄泉の国から逃げるときに、
ヨモツヒラサカのふもとになっていた桃の実3つを
黄泉の国の軍勢に投げつけたという記述があります。
このことから、
よもつへぐい=桃という連想をする人もいるかも
知れませんが、違います。
イザナキが桃の実を投げるのは
桃の木が邪気を退ける呪力を持っているという
中国思想によったものです。
よもつへぐいが桃だったからではありません。
この記事では、
黄泉の国の食べ物が何だったのか
具体的に説明しました。
最後までお読みいただき
ありがとうございました。

